
今回ご紹介するのは、ギタリストの戎屋聖一郎(えびすや せいいちろう)さんです。
戎屋さんは江別市出身。中学の時にロックをはじめ、20代からヴォーカル・エレキギターの演奏者として活動していた最中、ある出逢いをきっかけにラップ奏法をスタートします。
ラップ奏法とは、ギターを水平に膝の上にのせて、弦やボディーを叩き、はじきながら弾く演奏スタイル。現在は、北海道をはじめ全国各地で、オリジナル曲やカバー曲の演奏活動を行っています。今回は、そんな戎屋さんにラップ演奏を始めたきっかけや、演奏への思いを伺いました。
「HOME TOWN WINDS」 北海道の風に揺れる緑と故郷の温かさを表現した、戎屋さんのオリジナル曲。
【 北海道でロックと共に過ごした青春時代 】
―戎屋(えびすや)さん、本日はよろしくお願いします。
戎屋さん(以下 戎屋):よろしくお願いします。
―はじめに、音楽を好きになった時期を教えてください。
戎屋:小学5年生の時に、いとこがくれたロックのテープを聴いたのがきっかけです。世の中にこんなに格好良い音楽があるのかと、衝撃を受けたのを覚えています。
―ギターを弾き始めたのはいつからですか?
戎屋:中学校1年の夏にそのいとこからギターを貸して貰って、独学で勉強を始めました。それ以来ずっとギターを弾いています。
―高校卒業後の進路を教えてください。
戎屋:当時は教員の免許も欲しいと思っていたので、東京の大学の通信課程で教員免許取得を目指しました。その一方でバンド活動もしたくて、21歳の時に東京へ行きました。ですが、バンドメンバーがなかなか見付からなくて。それなら、自分で歌ってみようと思って、ギターを弾きながら歌っていました。
―当時はボーカルもしていたのですね。
戎屋:そうです。ベースとドラムの部分は自分でテープを作って、それを流しながら演奏をしていました。次第にベースとドラムの方を連れて東京のライブハウスで演奏をするようになって。2007年頃にギターを横にする弾き方に出逢いました。
【 音楽人生を変えたラップ奏法との出合い 】
―ギターを横にして弾く、ラップ奏法との出逢いについて教えてください。
戎屋:ある日、ロックのライブで、納得できない演奏をしてしまって。次の日、落ち込んだ気持ちを奮い立たせようと、YouTubeで自分の刺激になりそうな音楽を探していました。その時、カナダ人のギタリスト、エリック・モングレインの「Air Tap!」というラップ奏法の曲を見つけて。初めて聴いた時は、感激して思わず涙が出ました。
―そんなに強い衝撃を受けたのですね。
戎屋:当時は落ち込んでいたのもあって、自分を優しく勇気づけてくれるようなメロディーがとても心に響きました。エリック・モングレインの弾き方や、音色、曲調、すべてに感動しました。
―その時に初めてギターを横にして弾こうと感じましたか?
戎屋:当時は自分の演奏がロックで凝り固まっていたのかもしれません。アコースティックでこういったラップ奏法という演奏スタイルがあるのは知っていましたが、実際に目の前にして「そっちでやっていこう!」と思わせてくれたぐらい衝撃的でした。その時に聴いた「Air Tap!」を、自分でも弾いてみたくて練習を始めました。映像と音だけを頼りに、初めから全部手さぐりで覚えました。
衝撃を受けたというエリック・モングレインの「Air Tap!」を演奏する戎屋さん。目と耳だけを頼りにマスターした一曲。
―独学で習得ですか。弾き方も今までとはまったく異なりますよね。
戎屋:そうですね。冒頭の10秒を弾けるようになるまで2週間ほどかかりました。ちょうど1ヵ月半後にライブで弾こうと思っていたので、目標があった分頑張れたと思います。演奏をして反応も良く、自分自身も新しいことにチャレンできたので、達成感がありました。
―ギターを横にして弾くスタイルはその時から?
戎屋:初めはロックと同じ割合で演奏をしていましたが、横で弾くスタイルの方がお客さんからも求められてきたので、「やるなら集中してやろう」と決めて、横で弾くスタイルをメインに音楽活動を始めました。
【 1本のギターで多彩な音を奏でる 】
―戎屋さんが思う、ギターを横にして弾く魅力はどんなところですか?
戎屋:一番は音色です。見た目のインパクトもありますが、横にして弾くと、指で叩いた時に「ポーン」というハーモニクスが綺麗に出ます。ギターを叩いたり、弦を弾いて演奏することで多彩な音が出せます。ギターだけど、ギターじゃない、そんなところが魅力です。
―戎屋さんの演奏、指でギターの弦をポーンと叩いている音が綺麗で印象的です。
戎屋:あれはタッピングハーモニクスという手法で、横にして弾く奏法の一番の醍醐味だと思っています。そこが綺麗にできるかどうかと、曲中でタッピングハーモニクスをどう組み込むか、バランスを考えてアレンジしています。
―ギターを横にして弾くようになって、嬉しく思っていることはありますか?
戎屋:ロックの時は聴いてくださる方の年代が限られていましたが、ギターを横にするスタイルは、年代問わず聴いてくださる方が多いので、それが嬉しいです。
―最後に、今後やっていきたいことを教えてください。
戎屋:しばらく既存曲をアレンジして演奏していましたが、オリジナルの曲を今後はもっと作りたいと思っています。現在アルバムを作成中で、それはオリジナル曲でまとめて、自分が伝えたい世界観を感じられるものを演奏していきたいです。
現在は既存曲のアレンジや、オリジナル曲を全国各地で披露している戎屋さん。既存曲のアレンジや、オリジナルの作曲する時は譜面を一切見ず、感覚で覚えているそう。
戎屋さんは、ギター1本でたくさんの音色を聴かせてくれます。ピアノのように、繊細な音を奏でたり、ボディーをパーカッションのようにダイナミックに叩いたり。ギター1本で奏でているとは思えない多彩な音色に、耳も目も惹きこまれました。
演奏は、札幌市内だと豊平区平岸の「街はずれのたんぽぽ」や札幌市中央区の「BAR白楽天」で聴くことができます。(日時は変動する場合があります。詳細は、戎屋さんのHPをご覧ください。)
ぜひ一度、戎屋さんの演奏を聴いてみてくださいね。
戎屋さん、ありがとうございました!
【ギターを横にして弾く人 戎屋聖一郎】
HP:http://www.ebisulove.com/
ライブ情報や、演奏依頼については戎屋さんのHPをご覧ください。
【インタビュアー 加賀 夕理】