「あたたかな息吹を」と、木工に想いこめて。  木工作家 島田 晶夫さん

当別町スウェーデン交流センター内に工房を構えるのは、家具と木象嵌(もくぞうがん)を製作している、木工作家の島田晶夫さんです。

小学生から木工に没頭。高校、短大と知識を深めた後は、工房で修業を重ね、1997年にはスウェーデン屈指の名門「カペラゴーデン手工芸学校」に留学し、北欧の技術も学ばれました。

帰国後は、自らの工房を構え、2007年にスウェーデンクラフト協会から日本人初の「家具マイスター」の称号を授かりました。今回は、独立までの半生と物作りの根本を肌で感じたというスウェーデン留学について、お話を伺いました。

[物作りのきっかけは、一枚の木版画]

―島田さん、本日はよろしくお願いいたします。

島田さん(以下 島田):よろしくお願いします。

―島田さんが木に興味を持たれたきっかけは、小学4年生の時に作った木版画だと伺いました。

島田:そうですね。偶然木目が紙に映りこんで、素直に綺麗だと思いました。その印象が強くて、以来木で物を作るのが好きになっちゃって。今でもそれは続いていて、親からもよく飽きないねって言われます(笑)。

―子どものころから物作りに没頭されていたんですね。

島田:小学校のころは、友達とも遊ばずに木で物作りをしていました。今のようにインターネットで何でも調べられる時代ではなかったので、とにかく試して作ることばかりしていました。それが楽しかったんでしょうね。徐々に専門的に勉強したいと思うようになりました。

島田さんは中学卒業後、地元である苫小牧を離れて、音威子府高校(現おといねっぷ美術工芸高校)の工芸科、大学は富山県の高岡短期大学(現富山大学)で木工工芸を専攻。卒業後は岐阜、山梨両県の家具工房で腕を磨きました。1995年に、当別町のスウェーデン交流センター内にある工房に勤務することに。交流センターは1986年に文化交流拠点として開設され、展示会やスウェーデンガラス、木工作品の販売も行っています。

―修行後にスウェーデン交流センターで勤務を始めたのはなぜですか?

島田:交流センターには、中学生のころに見学に行ってるんです。工房を覗くと、スウェーデン人と日本人が一緒に作業をしている訳ですよ。「わあ、すごい」と思って。スウェーデン人と一緒に働くことで、現地の木工も勉強できると思いました。でも、実はここで働く前に、3ヶ月間ヨーロッパ旅行をしてるんです。北欧の空気を肌で感じたいと思って。

―3ヶ月ですか!

島田:スウェーデン、ノルウェー、デンマークなどを巡りましたが、3ヶ月のうち2ヶ月はスウェーデンにいたんです。(笑)空気の流れが凄くゆっくり感じられて、居心地が良くて。風景が北海道に似ているのもあり、親しみが持てました。途中で、「まずい、このままだと他の国に行けなくなる」って気付いて、慌てて飛び出して(笑)。スウェーデン滞在中は、大学生のころから興味があったカペラゴーデン手工芸学校も見学に行きました。

[スウェーデン留学に向けて]

島田晶夫さん_みちぶろ①

―「カペラゴーデン手工芸学校」というと、その後島田さんが留学される学校ですね。

島田:そうです。当時はスウェーデン語も話せないし留学は現実的じゃないなと思っていました。ですが、交流センターで一緒に働いた、スウェーデン人の木工作家のオルソンさんがカペラゴーデンの卒業生で、様々な話を聞くことができました。彼に「君の探しているものはスウェーデンにきっとある」と言われてハッとして。もっと「木工と向き合いたい」と思っていたので、思い切って入学試験を受けることにしたんです。

―不思議な縁を感じるエピソードです。

島田:背中を押してくれる人がいてくれたんだなあと思います。でも、学校の担当者から電話で面接できないか?と言われて、電話なんて無理!と思って(笑)。「今から行く」って即答したんです。願書と作品のファイルを持って、急いでスウェーデンに向かいました。

―すごい行動力ですね!

島田:向こうは「日本人来るみたいだぞ」って若干ザワついたみたいです(笑)。直接行って話せて、無事受かったので本当に良かったです。

[カペラゴーデンで過ごした日々]

島田晶夫さん_みちぶろ④

島田さんは1997年8月、当時26歳の時にスウェーデン南東のエーランド島へ。留学先のカペラゴーデン手工芸学校は、島田さんが専攻した木工科(現家具・インテリア学科)をはじめ、陶芸科、テキスタイル(織物)科、園芸科があります。留学中は、各学科の7人で共同生活を送っていたそう。初めの2ヶ月間は、言葉が通じず怖くて部屋から出られない日々だったと振り返りました。

―滞在当初は大変でしたか?

島田:当時は行ったらどうにかなると思っていましたが、やっぱりどうにかならなくて。授業ももちろんスウェーデン語で、何を言っているのか分かりませんでした。近くの席の人に「今先生が言ったこと英語にしてくれない?」って頼んで英語にして貰って…。でも、やっぱりスウェーデン語ができるようにならないとだめだと思って、2年目からは午前中語学学校に通いました。夕方は木工の勉強、夜は語学学校の宿題をして…。そしたら、人と話したくて語学学校に行ったのに、忙しくて話す時間が無くなりました(笑)。

―留学中、特に印象深かったことを教えてください。

島田:ひとつの家で様々な専攻の人たちと共同生活を送れたのは、とても意味の深いことでした。木工は家具、陶芸は食器、テキスタイルはカーテンや絨毯など、家の中にある必要なものを作ります。学校の中にはガーデンがあって、夏場はそこで収穫された野菜が食卓に並ぶんです。そんな環境の中で過ごすうちに、生活が豊かに感じたんです。決して裕福なわけではないんですよ。気持ちが豊かになる。物作りの原点ってここにあるんじゃないかなと思いました。

島田晶夫さん_みちぶろ⑥

―気持ちの面でも得るものが多かったのですね。

島田:共同生活をするうちに、学生たちが家の中で足りない物を話し合うようになりました。「俺ここ直すよ」とか「この食器ないから私作る」とか、みんなで工夫して家を良くしていく。快適になると自然と人が集まるようになって、週末のホームパーティーの回数も増えて…。それがとても楽しかった。今思うと、夢のような時間でしたね。

[デザインスタジオ シマダの設立]

島田さんは3年の学生生活と、現地の家具工房1年勤務を経て、2001年7月に帰国。翌月にはスウェーデン交流センターの許可を得て、かつて家具作りに没頭した工房を借り受け、「デザインスタジオ シマダ」を設立しました。

―工房を設立されて、どうでしたか?

島田:始めたばかりのころは、誰も島田晶夫を知りません。なので、自分を知って貰うために展示会をしようと思ったんです。展示会に向けてのデザイン、製作、会場探しを始めました。そのうちに会場も日にちも決まって、無事開催できました。初個展は、ありがたいことに多くの方に来ていただけて嬉しかったです。製作の注文も入って、初めてやっていけると実感がわきました。初個展が、好きだった物作りを「仕事」にできた瞬間なんです。

[木象嵌について]

島田晶夫さん_みちぶろ⑤

島田さんは、4年前の2014年から木象嵌(もくぞうがん)の製作もスタート。木象嵌とは、木を絵柄に沿って切り抜き、様々な色合いの木をはめ込んで絵にしていくもの。厚さ0.5㎜のベースとなる木に図柄を描き、デザインナイフで切り抜きます。そこへ違う色の木の板を重ねて切り抜き、一枚の絵を完成させます。糸鋸ミシンを使用する方法もありますが、島田さんは手作業にこだわり、自然の木の色合いを活かした作品を製作し続けています。

―木象嵌との出合いはいつですか?

 

島田:高校生のころです。雑誌の記事か何かで知りました。だけど、周りに作り方を知っている人がいなかったので、身の回りにある道具や材料で試行錯誤を繰り返しました。スウェーデン留学中に木象嵌をされている先生が来てくれて、ずっと疑問に感じていたことが聞けて、すごくスッキリできました。今は独学で得た方法と、先生から教えていただいた方法をミックスさせて、自分なりのスタイルで製作しています。

―木象嵌を製作のメインにしようと思ったきっかけを教えてください。

島田:2014年ころ、ある方から「木工作家としてやっていくにはどうしたら良いですか?」と尋ねられました。その時に「木工を始めたころの、やりたい気持ちを大事にした方が良いですよ」と答えたんです。その言葉が、そのまんま返ってきて。「自分は一番何がやりたいの?」と思い返すきっかけになったんです。その時、木象嵌を作りたいとすぐに思いました。家具ももちろん、木象嵌も作っていて楽しいから。「楽しい木工」と言ったら軽く聞こえてしまうかもしれませんが、楽しくないと嘘だし、自分に嘘ついてやる必要なんてない。それなら楽しい仕事をやろう!と思って、今は木象嵌をメインにしています。意外と最近です(笑)。

―仕事は楽しいですか?

島田:楽しいです。よく寝食忘れて没頭する…と言いますが、そのまんまです。気が付いたら夜で、ご飯を食べ忘れることも多いので、できるだけラジオを流しています。決まった時間に番組が始まるので、それで時間を確認してるんです(笑)。

島田晶夫さん_みちぶろ③

―島田さんは、木目だけを使用して木象嵌を作られているそうですね。

島田:そうです。自然のものなので、毎回表情や色が違います。試行錯誤の繰り返しで飽きないんです。木って本当に面白いなと思います。

―仕事で大切にしていることはなんですか?

島田:妥協をしないことです。作品作りに限らず、人生にも言えるですが、実行するのは本当に難しいことです。でも悔いだけは残したくないので、常に心に留めています。こうやって物を作っている人は、気持ちをどこまで貫けるかで、その人の強さ、筋が一本通っているかが出るのではと思います。僕も一本通っていたらいいな(笑)。

―最後に、これからの抱負をお聞かせください。

島田:変わらず作り続けられることが幸せだと思っているので、これからも初心を忘れずに、物作りに励んでいきたいです。

木象嵌の木目の色と線からは、あたたかな息づかいを感じます。物作りが好きな気持ちひとつで、ここまで続けてきたという島田さん。木象嵌の抽象画や家具、掛け時計や小箱など、製作を通じて、日々木と向き合い続けています。

島田さん、ありがとうございました!

島田晶夫さん_みちぶろ⑦

[design studio shimada]

(デザイン スタジオ シマダ)

住所:北海道石狩郡当別町スウェーデンヒルズ2329-25

電話番号:011-788-8563

HP:https://d-s-shimada.com/

 

[インタビュアー 加賀夕理]

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